ＮＥＣオフコンの歴史
１２．ＲＩＳＣ ＣＰＵのＥｘｐｒｅｓｓサーバ（1995/8〜1998）
- 12.1 二つの顔を持つサーバ
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前章に述べたように、S7200シリーズである程度のオープン対応を行いましたが、さらに思い切ったオープン化が必要であることは明らかでした。
こうして1995年8月にExpress5800/700シリーズとその上で動作するA-VX3が１年間の開発期間を置いて登場しました。
Express5800/700シリーズのCPUはMIPS社のR4400を搭載していました。そしてOSとしてはMIPS版WindowsNT Server3.5が搭載されており、その上でA-VX3が動作する仕組みになっていました。つまり正確に言うと、A-VX3からはOSではなく、Windows上で動くミドルウェアとなりました。ただし、従来の流れから、A-VX3や後のA-VX4もOSの範疇に入っているようです。Express5800/700シリーズは、WindowsとA-VXが搭載されているため、Windows用、A-VX用両方共のアプリケーションが実行できます。特にA-VX側については、従来のITOSやA-VXで作成したユーザアプリケーションについては100%互換性を保っていました。また従来から接続されていた周辺装置もA-VX機能拡張ラック／ボックスを経由することによって、Express5800/700シリーズに接続することができました。このように容易に従来オフコンからExpress5800/700シリーズに業務を移行することができました。さらに１台のサーバでWindowsとA-VXが動いているため、A-VXのデータをWindows側に従来よりもさらに容易に変換することができるようになりました。このように従来の業務も新しい業務も両方ともに対応できるようになっていました。
最初は、S7200シリーズの中位／下位機に当るモデルしかなかったため、Express5800/700シリーズとS7200シリーズは併売されていました。しかし、1996年9月にCPUにR10000を搭載した上位モデルが出荷され、ようやくExpress5800/700シリーズのみで従来のオフィスサーバ全ラインナップをフォローできるようになりました。
搭載されるOSも、WindowsNT Server3.51、WindowsNT Server4.0と常に最新のものが用意されました。
- 12.2 MIPS版WindowsNTの終了
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順風満帆と思われたExpress5800/700シリーズですが、1996年10月16日に突然マイクロソフトから、Express5800/700シリーズにとって不幸な発表が行われました。その発表とは、MIPSプラットフォーム上でのWindowsNTベースの将来の開発を段階的に縮小していくことに決定されたというものでした。これはWindowsとA-VXの両方のソフトウェアが同時に動くという最大の特徴が失われ、A-VX側だけではExpress5800/700シリーズ開発のそもそもの目的であるオープン化が果たせないことを意味します。
結局、MIPS版のWindowsNT Server4.0のService Packは２まで（Intel(x86)版は6aまで有）、そしてMIPS版のWindows2000はリリースされませんでした。
NECは1998年3月にWindowsNT Server4.0に対応したA-VX3 R2.1をリリースしましたが、MIPS版Windowsの新バージョンが登場しない以上、A-VX3もこれ以上続けるわけにはいきませんでした。1990年代前半はCISC CPUに対してRISC CPUが性能的に圧倒的に優位に立っていました。実際、IBMのAS/400も1995年にRISCを採用していますし、パソコン分野でも1994年頃にMacintoshがやはりRISC（PowerPC）を搭載したモデルを発表しています。Express5800/700シリーズ発表当時のコンピュータ分野の流れはRISC CPUだったということは間違いなく、NECは数あるRISC CPUのうちから自社でも生産していたMIPS社のRISC CPU［R4400シリーズ］をA-VX3のプラットフォームに選択しました。唯一の誤算といえば、その後のPentiumをはじめとするCISC CPUの猛烈な性能向上によって、サーバ用途のRISC版Windowsの大きなマーケットが形成されず、マイクロソフトがサーバ用途のRISC版Windowsから撤退してしまうことを読みきれなかったことだと思います。
Express5800/700シリーズは、より一層オープン機能が拡充されてExpress5800/600シリーズに引き継がれることになります。
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